にがき日
日吉駅裏の文具屋棚の奥アラビア糊は眠りつづける 村田馨『疾風の囁き』
・・転勤するとどうにも勝手がちがうことで戸惑うのはわかっていたから、いろいろ心つもりはしていたけれど、
今の職場の事務室の棚の奥にアラビア糊を見つけ、そんなことだけでも泣きたくなるほどなつかしくて気持ちがはげしく揺らぐ。
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完璧に人に負けたる日がをはり〈ぜつばう〉と書く書きて忘るる 永井陽子『小さなヴァイオリンが欲しくて』
しやきしやきと喰む秋茗荷職業を持つゆゑにがき日もありしこと 永井陽子『てまり唄』
・・茗荷を食べれば辛いことが忘れられるというのなら、まだ食べないでいるってことは、それほどつらい状況じゃないってことかな、なんて思ってみたりもするのだが。
覚えなければならないことばかり山積しているというのに、忘れなければならないことばかりが増えていく。
ところで忘れ草、って花があるらしい。「忘れな草」じゃないほう。
効果はともかく、こんな花がこの世に存在しているって思うだけで、なんだか救われる気がする。
思ひ草繁きが中の忘れ草 いづれむかしと呼ばれゆくべし 斎藤史『秋天瑠璃』
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