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2005年3月10日 (木)

わたしが短歌をはじめたころ

むかしの歌集に今になってあんなすばらしい評を書いてもらったことにちなんで・・

短歌をお勉強しはじめた頃に買った本を読み返してみた(別冊文芸読本「女流短歌」S63発行)。
古今の有名女流歌人のアンソロジーがのっているのが魅力の本で、しるしなんかがしてあるのを見ると、恋愛歌やうつくしい山河なんかを詠んだものはほとんどスルー、子供を詠んだものに注目しているのがよくわかっておかしかった。
わたしが本格的に短歌をつくりはじめたのは年齢的にいえば結構おそく子供が生まれてから、25歳ごろだろうか(S63年当時ではない。もっとずっとあと)。それでも世間的にいえばまだ若いのであるからもっと別のことに興味をもってもいいはずだと思うが、ほかのことが入りえないほど私の心はちいさく、世界は狭かった。

子は抱かれみな子は抱かれ子は抱かれ人の子は抱かれて生くるもの  河野 愛子
子がわれかわれが子なのかわからぬまで子を抱き湯に入り子を抱き眠る 河野 裕子

気力体力をぎりぎりまで使い果たし、報いられるものは子供の笑顔だけ、という毎日の繰り返しのなか、子供のお昼寝の間、おしめなんかをたたみながらわたしはこういう歌が載っている本をよんでいた。
泣く子供を背に負い、ゆすりながら読んでいたこともある。
そういうことは子供の手がはなれてからにしろとよく叱られもした。
まだだれもおきていないある静かな早朝、本を読んでいるのを見つかって働き者のお舅さんにひどく叱られたことがある。
あんなに叱られなければならなかったほどわたしは悪い母親だったのだろうか。
だが・・

奔馬ひとつ冬のかすみの奥に消ゆわれのみが累々と子をもてりけり 葛原 妙子

同感できなかったのか単に「幻視の女王」の華麗なる世界が読み解くことができなかっただけなのか、たぶん理由は後者だろうがこの歌にしるしをつけなかった当時のわたしに、ほほえましいものを感じる今のわたしではある。

君を打ち子を打ち灼けるごとき掌よざんざんばらんと髪とき眠る 河野 裕子
突風の檣(ほばしら)のごときわが日々を共に揺れゐる二人子あはれ 河野 裕子

つたないながら子育ては楽しかったし、ささやかながら子供に対する愛情もあった。
それゆえ困ったり追い詰められたりすることもあったが、こういう歌に自分を見出し作者に同感することで、苦しむ日々をも肯定することができるようになっていった。そうやって、嵐のさなかであっても昇る朝日もまた最初に見ることの出来る船の檣(ほばしら)を、当時のわたしは自分のなかに見出していこうとしていったような気がする。

大変な日々に読んだ本はまさに戦友といえるだろうが。
こういう戦友たちにどれほど支えられてきた自分かと思う。

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コメント

うちの妻は専業ですが、私は次男なので、どちらかというともっと楽な方だとは思います。
でも、”気力体力をぎりぎりまで使い果たし、報いられるものは子供の笑顔だけ”
きっと妻もそう思っているのでしょうかね。
いやいや、今は必死で、後にこう思うのでしょうかねぇ。

投稿: seurat | 2005年3月10日 (木) 12時16分

私の妻は男児2人をそだて、国家公務員現業職勤続30年に歌舞伎座で小泉さん(当時大臣でしたので)から表彰状をもらい、私も同席させられました。私の実母は男児4人の母として、農業の担い手であり、姑・舅の介護に疲れ、その嫁・姑バトルはこどもごころにもすさまじいものでした。中学生の私も、田で働く母の代わりに祖母の介護でつらい体験もしています。なお、嫁・姑バトルとともに、実母とその介護にあたる娘のバトルもすさまじいものですね。

投稿: ぐみ坂のかぜ | 2005年3月10日 (木) 14時35分

ぐふふ。久しぶりで生々しいおはなしですよ~?、seuratさま~☆

んー。「気力体力をぎりぎりまで使い果たし、報いられるものは子供の笑顔だけ」でもなかったかなぁ。寝顔にも癒されたっけ。ううん、もちろん、愛している子供といつもいっしょにおれる幸せというか、喜びはなにものにもかえがたかったですよ。
しかし一成君、おおきくなりましたねー。
奥様、きっとseuratさまに感謝なさってらっしゃいますよ!


ぐみ坂のかぜさま~☆

>嫁・姑バトルはこどもごころにもすさまじいものでした

うーん。御覧になってらしたんですね・・
でも母親とばーちゃんがバトルしているありさまって、子供から見ていて、どうなんだろう・・
ここだから書いちゃいますが、わたし、「子供の前では私を叱ったりしないでください」、って、何度も言ったことあるんですけど・・
なんだか、子供がいると、ギャラリー登場ってわけか、余計、すごくなってたなぁ、うちのお舅さん・お姑さん。
いえ、今は歳のせいかずいぶんとおとなしくなっておいでですが・・って、単にわたしが強くなってきただけかも。

>実母とその介護にあたる娘のバトル

そうなんですね・・
身につまされます。

でも・・バトルしているうちが華かも。
いよいよ冷たい関係になったら、そんなこともなくなってしまうだろうし・・

投稿: 美頬 | 2005年3月10日 (木) 16時28分

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