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2004年9月13日 (月)

『輝く日の宮』を読んだよ

源氏物語の二次創作というのは柳亭種彦が江戸時代にものした「偽紫田舎源氏」のむかしから人気があったジャンルである。
現代でも古いところでは岡田鯱彦(現実に国文学の教授だったらしい)の『源氏物語殺人事件』(昭和25年)。
それと長尾誠夫『源氏物語人殺し絵巻』(昭和61年)。
とくに『源氏物語人殺し絵巻』は風来の名探偵役としての頭の中将がかっこよく、対するダーティーヒーローとしての光源氏が悪の魅力たっぷりで、よかった。(ネタバレになるけど、遠隔操作殺人というすげ~展開もある)
まだおさなかったころの和泉式部と紫式部の仲良しコンビが京の都で大活躍!というはなしも読んだことがある。(のちの「紫式部日記」に書かれた和泉への評の、確執?じみた記述を思えば感慨深い)
そのほかいろいろあったが・・忘れてしまった・・
やはり原典の、夕顔の頓死やら六条御息所の死霊・生霊がたたりをなして人が死んだりする物語の顛末がミステリーファンをそそるようで、くりかえしその周辺がテーマになって書かれているらしいのもおもしろい。

そういうわけで第31回泉鏡花文学賞の丸谷才一『輝く日の宮』を読む。読み終えるのに約二週間かかった。旧かなだし、長大だったが冗漫さはなく、知的な興奮が味わえる一級の娯楽小説といえようか。源氏物語の謎にまつわる物語だから当然といえるかもしれないが、大学時代の恩師のひとりの名前が一瞬でてきておかしかった。
恩師の名前を見て、学生時代の不勉強をつくづく後悔しつつ、多少とも得たはずの知識を生かすことができない今の生活を恥ずかしく思う。

源氏物語の失われた巻とされる「輝く日の宮」をヒロインが行きがかりで執筆することになった、その内容が気になっていたが、もうひとつだった・・
ヒロインはまず紫式部になりきって物語を書こうとするわけだが、そこで出てくる紫式部のパトロンでありよき理解者である藤原道長が、違和感ありすぎるほどできた人物として描かれているのだ・・
橋本治『窯変源氏物語』のような精緻でありながら濃厚で耽美な世界を期待していたのだが、期待はずれ。
また、少女時代に書いた小説にでてきた過激派が現実にシンクロしていたのも、そのままわからないおわりかたをしている。
そういう意味では、さいご、走りすぎたのかもしれない。
434ページもの大作だが、もう100ページぐらい長くなっていてもよかったのにと思ったりする (爆

冒頭が泉鏡花ばりの怪異譚で(劇中劇ならぬ、小説のなかの小説)、泉鏡花ファンにとっては感激そのもの。
だからやっぱり、ここは泉鏡花の『夜叉ヶ池』ばりの大洪水あたりでラストをしめてほしかったが(ヒロインの恋人が「水」関係の会社の社長になったりしていることだし)・・いくら丸谷才一といえども、現代の小説においてそんな無茶なことはできなかったということか。

大和和紀の少女漫画『あさきゆめみし』の連載時期が1980年11月-1993年7月(月刊mimi・mimi Excellent連載)というらしいから・・・
源氏を大衆化した貢献はあるし、解釈の新しさと言う意味でもなにかあってもいいと思ったけど、でもぜんぜん、言及がないのよね。
まあ、仕方ないと思うけど。

とはいえ、成功小説、恋愛小説としてもおもしろく読めたのは事実。
この勢いで、
「千年の黙(しじま) 異本源氏物語」(森谷明子*著、東京創元社) ここ
「闇の血脈」(広山義慶*著、ケイブンシャ文庫)(1985年祥伝社より刊行された「源氏物語原典殺人事件」を文庫収録にあたり改題したもの) ここ
もなんだか読みたくなってきた。
もしかしてマイブーム?の予感かしらん。

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