« 海と少年 | トップページ | わたしは女優よ »

2004年8月15日 (日)

家族旅行の思い出

小学校5年生の夏、出張中の父を迎えがてら東京見物をしようということになった。何日もまえからあたらしい服を用意したりして、その日を待ち、母とわたしと弟と三人で、朝早く大喜びで出かけた。新幹線にはじめて乗って、おのぼりさん大炸裂で、おおはしゃぎだった。
東京駅に着き、母は父に電話をした。到着したから迎えに来て、というようなことをたぶん言ったのだと思う。ふと見ていると電話口の母の様子がどうも変である。「どうしたん?」 と真っ青になっている母にたずねると、どうしよう、日にちを一日間違えていたと言う。父と待ち合わせしていたのは本当は明日で、一日はやくきてしまったのだ。だから今夜は泊まるところがない、と母は泣かんばかりの様子でわたしに言った。
変だなあというのは以前から感じていたことだった。東京に迎えに行くからと父と何度も約束した日にちがいつかはやくなってしまっており、早くなるほうがこちらとしては楽しいから気にしなかったが、つまりこういうことか。合点したものの、母は父にひどく叱られてパニックになってしまっており、これからどうしようかと小学生のわたしにすがりついてくる始末。わたしはというと、こうなりゃあいちにち得したわけだから、と大喜びで、お気楽なものだった。「お母さんががたがた言っても仕方ないでしょう? 旅館のことはお父さんがきっとなんとかしてくれるから、連絡を待って、とにかく今からはとバスにのりましょう!」、などと、すっかりその場を仕切っていた。

昼間、上野のあたりをまわった。そのあと国立科学博物館に行ったのだと思う。いちど行きたいとおもっていたのでうれしくてたまらず、熱心に展示物を見てまわっていた。そんなわたしにどうして興味をもったのか、職員らしきひとがひとり、とても親切に声をかけてくれ面倒をみてくれた。そのひとは、途中呼び出しがあってもすぐに戻ってきて、わたしを見つけるとすごくうれしそうに(駆け寄るように)やって来て、引き続いてまたなんやかやと世話をしてくれた。夏休みなのでほかにも見学者はいたのに、そのひとはなぜかわたしひとりの貸切状態になっていた。わたしはただ、立派なおとなの男のひとがきちんとわたしの話や質問を聞いて説明してくれるのがうれしくて、ひたすらよろこんでいたが、母はというとすっかり意気投合してできあがってしまっているわたしたちの姿にだんだん不安を感じ始めてきたらしい。ぼんやり者の母でも困った、と思うほどだったというから相当だったというのだろうか。そのまま放っておいてくれればよかったものの、用事があるからといそいでわたしの手を引き、そのまま館から出てしまったという。
どのような人だったのだろうか。とても親切でいいひとだったのに、帰るときにきちんとお礼とか言えただろうか。
もっといろいろ聞きたいことはあったのに。
・・今も気に病んでいる。
でも、そのときのたのしかった思い出のおかげで、今も博物館とかは大好きである。

その夜、どんなところで泊まったのかはさだかではないが・・
父の手配で用意された宿は、どうみてもいいところとはいえず、ふすまいちまい隔てた(ということは相部屋だったのか?)あちらがわでお酒でものんでいるのか、わあわあ大騒ぎをしているのがうるさく、心細かった。
父はむしろ社内外交にたけた人だったらしく、若い頃家をたてたとき、「競馬と麻雀で『ばくち御殿』をたてた」と同僚たちに言われている、と自慢していたぐらいだったが、妻子の予定外の急な上京に宿をさがすも万策つき、たぶんいつも麻雀をやっているようななじみのところに頼み込んで、わたしたちを押し込んだのではないかと思う。もちろんあまりいい場所ではなく、子供心に、ヤバそう・・と思ったことを覚えている。母はどう思っていただろうか。でも、子供むけの『東海道中膝栗毛』などを読んでいたわたしは、となりの上品らしからぬ大騒ぎを聞きながら、これも旅と言うものだ、などと思ったりもして、いた。


えっと。
このたびの旅行のことは明日アップします。
舞鶴から天橋立にいってきました~
楽しかったです~☆

|

« 海と少年 | トップページ | わたしは女優よ »

アート・文化」カテゴリの記事

旅行記」カテゴリの記事

コメント

おかえりなさい。
少し笑えるお母様ですね。

でも、子どもの頃って、旅行用に新しい服、必ず買って貰いましたね。
今でも、新しい服や靴、靴の後ろにマジックで書かれている名前なんかを見た瞬間は、自分の子どもの頃とダブります。

母の優しさを感じる場面の一つなのです。

投稿: seurat | 2004年8月16日 (月) 11時57分

は~い、seuratさま~☆

ええ・・母は、若い頃すごい美人で・・でもやることなすこと、すべてすっとこどっこいだったんです(泣)

>でも、子どもの頃って、旅行用に新しい服、必ず買って貰いましたね。

ええ、そうなんです。
でも母の場合、いつもわたしの服は縫ってくれていました。
わたしのためにあたらしく縫ってくれた服でお出かけするときの楽しさ、今も思い出します。

でも・・博物館の職員の方、ほんとうにいい方だったんですよ。
お礼の手紙とかも書いた気がするんですけどでも、母が出してくれなかったかもしれない・・
今もお礼が言いたいなあ。

今でもよくこのときのこと、母と思い出話するんです。
本当に強烈な旅行でした。

投稿: 美頬 | 2004年8月16日 (月) 22時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/128675/2575867

この記事へのトラックバック一覧です: 家族旅行の思い出:

« 海と少年 | トップページ | わたしは女優よ »